2016都市住宅学会賞・業績賞

 公益社団法人都市住宅学会では、都市住宅学、都市住宅計画・事業、都市住宅政策等に関する優れた業績を、「都市住宅学会賞業績賞」として表彰しております。
 このたび2016年都市住宅学会賞業績賞につき、7業績を選考し、第24回学術講演会会場にて表彰
されました。また会場では受賞業績のパネル展示が行われました
 今回受賞した各業績は講評に示されるように 、いずれも都市住宅に関する優れた業績であり、今後の都市住宅の向上・発展に大きく貢献するものと認められます。




◆ひばりが丘団地 団地再生事業


独立行政法人都市再生機構
株式会社日本生科学研究所


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 ひばりが丘団地は、1959年、首都圏発のUR賃貸住宅団地(住宅戸数2714戸)として開発された。1999年3月から建替え事業が開始され、民間事業者による分譲住宅や高齢者福祉施設も建設されて、2012年にひばりが丘パークヒルズとして再生した。
 その特徴は、複数街区(計6街区、約7.3ha)に及ぶ分譲住宅用途の敷地を対象に、企画段階から開発・まちづくりに関与する民間事業者をURが公募により選定し、URと民間事業者の各々が有するノウハウを活かし、共同でまちづくりを推進する事業パートナー方式にある。また2014年6月にエリアマネジメント運営組織として一般社団法人が設立され、2015年11月の拠点施設開設以後、本格的なエリアマネジメントが実施されている。
 これまでのUR団地再生事業では、分譲住宅用敷地が街区単位で事業者へ譲渡され、単独開発に委ねられて、まちの一体感が失われていた。本事業は、事業パートナー方式による一体的なまちづくりと共に、エリアマネジメントにより地域のコミュニティ活性化支援に資する事業を行い、将来に亘る地域価値の維持・向上を目指している独創的な事例である。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。



◆スマ・エコ タウン 陽だまりの丘

大和ハウス工業株式会社


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 本事業は、桑名市における「陽だまりの丘先進的都市型スマート住宅供給事業」による、戸建住宅団地開発プロジェクトである。住民共有の太陽光発電設備を設置しこれをエネルギー会社に賃貸して、収益を共用部および超小型モビリティ(電気自動車)の維持管理費や修繕積立金等に充当する。太陽光発電設備は災害時には非常用電源として外部にも開放される。エネルギーマネジメントの視点から戸建て住宅団地における新たなコモンズの概念を提示するとともに、管理組合とエネルギーマネジメント会社との役割分担を構築して住民の負担を軽減する等、エネルギー会社のサポートをふまえたタウンマネジメントの仕組み作りに挑戦している。また個々の住宅に設置された太陽光発電設備とリチウムイオン蓄電池を軸とするHEMSは、エネルギー消費の見える化や住まいのメンテナンスサービス購入に結びつけることにより、自発的な省エネライフスタイルの実現に寄与する。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。



◆京町家カルテと地元金融機関による京町家専用ローン

公益財団法人 京都市景観・まちづくりセンター

株式会社京都銀行

京都信用金庫

京都中央信用金庫 

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 京都市景観・まちづくりセンターは、所有者が価値を知らないことが京町家継承の課題になっているという問題意識から、所有者やその関係者の認識を深め、適切に維持・管理する目的で、基礎情報・文化情報・建物情報・間取り図で構成される京町家カルテを整備し、発行している。
一方、金融機関は、京町家の価値を認めながらも住宅の価値を評価する仕組みを持たず、土地の評価のみでは、4m未満の道路幅に接道しない路地の京町家を購入・改修して住みたい人がいても、流通、継承が難しかった。そこで、公的機関が発行する前述の京町家カルテを用いて、京町家としてのポテンシャルを適正に評価し、購入・改修にローンを認めるシステムを作り、運用するという本事業に着手した。
 京町家カルテを活用した融資実績は、当初の地元1銀行から3銀行に広がり、1銀行の融資実績は5年間で126件、30億円を超えている。同様の仕組みが滋賀県の金融機関でも取り組まれるなど、住宅の歴史的、文化的価値を評価した融資のあり方は、ストック活用時代にふさわしい街並み保全や住文化の継承に道を開いた。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。

 


◆市営住宅ストックを活用した団地・地域コミュニティの再生
 -空き住戸を活用したコミュニティビジネス活動拠点の導入事業-

 

大阪市都市整備局

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 本事業は、団地や地域の活性化につながる活動に取り組むNPO法人等の団体をプロポーザル方式により選定し、市営住宅の1階空き住戸を団体の活動拠点として提供するもので、高齢化の進行や地域社会との分断等の市営住宅の課題に対して地域に開かれた「市民住宅」への再編をめざす取組みとして高く評価される。
 活動内容は、高齢者生活支援、子育て支援、地域コミュニティ活性化支援など多様で、それらのサービスは団地を越えて広く地域に提供されている。また本事業は、団地や地域への貢献だけでなく、活動拠点の提供や使用料減額措置などにより、非営利団体の支援にも貢献している。
さらに本事業は、目的外使用の承認を得ることでNPO法人や地域の非営利任意団体による空き住戸の活用を実現しており、他の自治体の公営住宅ストック活用のモデルとなる。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。




◆大学連携によるストック活用型男山団地環境再編への取り組み


関西大学団地再編プロジェクト

八幡市

独立行政法人都市再生機構西日本支社

京都府


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 本事業は、UR賃貸住宅と分譲住宅からなる共同建て住宅の男山団地を対象としている。受賞者らは当該団地の地区センターに位置付けられる中央センターに「だんだんテラス」と呼ばれる交流拠点を開設し、京都府の公共員らを常駐させながらコミュニティ活動を展開している。だんだんテラスでは、通信の全戸配布、各種会議、ラジオ体操、住宅改修相談、懇親会等が行われることで、交流拠点としての機能が確立されつつある。一方、これまでのURによるDIYは空き家になった住戸の新規入居を対象としたものであったが、男山団地では前述の住宅改修相談などの活動実績を踏まえつつ、現行の「模様替え申請制度」を発展させ、原状回復義務を免除する「セルフリノベーション」のための特区が設定された。これらの活動は住宅政策上の実務の発展に寄与するだけでなく、大学と地域の連携の先導的な事例であると評価することができる。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。



◆ホシノタニ団地


小田急電鉄株式会社
株式会社ブルースタジオ

プロジェクト概要:PDF

 座間駅前の築50年以上の社宅を耐震補強・リノベーションして賃貸住宅とするとともに、敷地全体をリノベーションして駅前エリアの再生を目指している。敷地内の駐車場を削減して芝生広場、菜園、ドッグラン等を設け、住棟1階に子育て支援施設とカフェを入れ、地域に開いた。住居も周辺と同等以上の賃料で満室となるなど実績を上げている。なお、4棟のうち2棟は市が借り上げて市営住宅としている。特に、以下の点を高く評価した。
・団地のオープンスペースを地域に開き、公益施設や緑豊かな環境を提供している点
・鉄道事業者が収益性を考慮しながらも、社会的視点をもって駅周辺全体の発展に取り組んでいる点
・都心からの距離や急行停車の有無だけで決まる価値ではなく、独自の価値が形成できる駅前の可能性を提示した点
・団地(社宅)の再生を通して市や地域との連携が生まれており、新たな官民協働の可能性を提示した点
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。

 


◆柏崎市えんま通り商店街におけるまちづくり市民事業による住宅再生と

 市街地復興プロジェクト

 

中村 康夫 (えんま通り復興協議会)
田口 太郎 (えんま通りの復興を支援する会、徳島大学)
益尾 孝祐 (えんま通りの復興を支援する会、アルセッド建築研究所)
岡田 昭人 (えんま通りの復興を支援する会、早稲田大学都市・地域研究所)
三井所 清典(えんま通りの復興を支援する会、アルセッド建築研究所)
佐藤 滋  (えんま通りの復興を支援する会、早稲田大学)

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 2007年7月の中越沖地震により大きな被害を受けた新潟県柏崎市のえんま通り商店街は、以前からの空洞化と震災復興に対処するため、住民自らリスクを負った市民事業として復興事業を行った。被災した地権者、居住者が主体的な復興を掲げ、8か月後には「えんま通り復興協議会」を組織し、専門家集団(えんま通りの復興を支援する会)に復興基金による支援の委託を行い、協議会主導で震災1年後には「復興まちづくり構想」をまとめた。地区の将来像を全員が共有し、将来、地区が一体の市街地となるよう「まちづくりガイドライン」も策定し、これらの方針に基づきつつ事業を実施して一気に早期の復興を目指すのではなく、できるところから段階的・連鎖的に徐々に復興を進め、非常時と平時を連続的につなぐ復興のあり方も示している。専門性の高い「支援する会」の協力を得て、現在、優良建築物等整備事業を用いた共同建替えが2地区で終了し(地区の目標像となる住商併用建築の埋め込み)、新規居住者を呼び込む(まちなか居住)ことにも成功している。さらに、個別更新の店舗併用住宅は建築士会の協力のもと構想・ガイドラインに沿って建設されており、地区の復興に一区切りがついた。
 以上より、本事業は、当学会の業績賞に相応しいと認められる。





2016年都市住宅学会業績賞審査員

大場 茂明   大阪市立大学大学院文学研究科教授
海道 清信   名城大学都市情報学部教授
窪田 亜矢   東京大学都市工学科都市デザイン研究室准教授
桑田 仁    芝浦工業大学 デザイン工学部デザイン工学科教授
小松 尚    名古屋大学大学院環境学研究科准教授
田端 和彦   兵庫大学生涯福祉学部社会福祉学科教授
弘本 由香里  大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所特任研究員
藤岡 泰寛   横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院(建築学教室)准教授
米野 史健   国立研究開発法人 建築研究所 住宅・都市研究グループ主任研究官
安枝 英俊   兵庫県立大学環境人間学部准教授
山鹿 久木   関西学院大学経済学部教授
山口 健太郎  近畿大学建築学部建築学科准教授
                               (敬称略・五十音順)


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