2008年都市住宅学会賞・業績賞

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2008年都市住宅学会業績賞授賞プロジェクト及び講評
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◆桃坂コンフォガーデンプロジェクト

関電不動産株式会社・大和ハウス工業株式会社・独立行政法人都市再生機構
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大阪赤十字病院建替えに伴う余剰地における分譲・賃貸住宅、近隣商業施設、医療モール等からなる街づくり事例である。病院との医療連携、老人ホーム、託児所、医療モール等と住宅との有機的連携が図られている。更に、地区内通路が景観・機能面で有効に機能し、地区外にも配慮した一体的屋外空間が創出されている。医療機能等を地域コミュニティ空間に融合させることに成功しており、少子高齢化時代の都心居住の新たな可能性を拓いた事例として、業績賞に相応しいものと認められる。

◆シニアハウス陽だまり

宮地泰子
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路上の人々や生活に急迫する高齢者等の一時居住の場所として、簡易宿泊所をサポーティブハウスに転換した「陽だまり」の実績と共に、そこに居住する人々のステップアップの場として、終の棲家となる「陽だまりⅡ」を自力で設立したことが評価の第1である。他方、宮地氏が代表であるサポーティブハウス連絡協議会には、別の方向を創出しているところもあり、サポーティブハウス連絡協議会傘下の取組みも含めた授賞が最もふさわしいと考えられた。

◆戸畑C街区整備事業

株式会社竹中工務店・北九州市・隈研吾建築都市設計事務所
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本事業は、自治体が主導しつつ民間の資金と手法の導入に成功した興味深い事業である。一般公募型プロポーザル方式で事業者を決定し、一部事業者へ市有地売却を行って、本来ならば市主導、監理を行うべき各施設の建設を民間の力で促進した点は大いに評価できる。「多世代共生型のまちづくりの実現」という目標に沿った整備が具現化され、有効な複合開発となっている点でも非凡な事業といえる。公共施設配置の見直しを進める中で、近年注目されるPublic Real Estate戦略の先行事例ともなり、今後の都市居住に関して期待を抱かせるものであり業績賞受賞に値する。

◆特定非営利活動法人 福祉亭

特定非営利活動法人 福祉亭
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NPO法人福祉亭では、多摩ニュータウン永山団地内の空店舗を利用し、2002年開設以来、高齢者の交流の場としての食事・喫茶サービスの提供、イベント開催のほか、子育て支援、在宅支援など、地域の人々の交流拠点として幅広い活動を行ってきた。今日でこそ、同種の取組は全国で進められつつあるが、先駆け的存在として評価される。運営も地域のボランテイアによって支えられ、中学生の職場体験の受け入れ先や、研究者・大学生などによる研究拠点としても活用されるなど、教育・研究活動にも寄与している。都市住宅学への貢献が大きく、授賞に相応しい業績である。

◆富田林寺内町(じないまち)保存と街なみ環境整備事業による町並み整備

富田林市・富田林市寺内町をまもり・そだてる会
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重伝建地区指定を受け、伝統的建造物等の修景助成を行いつつ、街なみ環境整備事業により、交流館の建設や道路の美化舗装、街路灯の設置などの整備を行い、歴史的まちなみが甦った。のみならず、町家を活かした店舗、工房の立地、ボランティアガイド、四季まつりなど、地域づくりもすすんでいる。大都市圏では多様な価値観や開発圧力により、合意形成すら難しいなか、本事例は歴史的街なみの保存による住環境整備の好事例として高く評価できる。

◆寝屋川市萱島東地区~木造密集市街地における公、民の連携・協力による良好なまちなみの形成~

井上 守・財団法人大阪府都市整備推進センター・寝屋川市
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困難な密集住宅地区の整備を、あらゆる手法や知恵を駆使し、基盤整備と共同更新とを総合しながら、住民と協議を繰り返し、こつこつと進めた持続努力は、官公民の熱心な思いの結晶として具体化された。事業の始まった25年前に比べ、地域は改善され、結果として、区画整理事業よりもコストが低く押さえられた。この実現化手法と、事業を持続させ街の変化を実感できるまでに発展拡大させた成果は、都市住宅学の業績として高く評価できる。

◆可児市桜ヶ丘ハイツにおける住民主導のまちづくり活動

河崎 典夫・森田 裕之助
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岐阜県可児市の桜ヶ丘ハイツは名古屋市の外延に位置する良好な住宅地であるが、この地区ではパチンコ店の出店計画への対応を契機として住民主導のまちづくり活動が生まれ、地区計画の策定推進、移動支援(送迎サービス)などが展開されてきた。これらの活動は、臨機応変で独創性が高く、他の郊外住宅地のモデルとなるものであり、この活動の中心となって来たまちづくり協議会の業績は受賞に値する。

2008年都市住宅学会業績賞審査員

阿部 順子      椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科准教授
生田 京子      名古屋大学工学研究科助教
碓田 智子      大阪教育大学教育学部教養学科准教授
大場 茂明      大阪市立大学大学院文学研究科准教授
兼田 敏之      名古屋工業大学大学院工学研究科教授
窪田 亜矢      東京大学都市工学科都市デザイン研究室准教授
志賀 咲穂      兵庫県立大学環境人間学部教授
清水 千弘      麗澤大学経済学部准教授
田端 和彦      兵庫大学生涯福祉学部社会福祉学科教授
千葉 桂司      株式会社URサポート常務取締役 都市再生業務本部長
中野 英夫      専修大学経済学部教授
阪東 美智子     国立保健医療科学院建築衛生部主任研究官
村山 顕人      名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻准教授
米野 史健      大阪市立大学都市研究プラザ博士研究員
山鹿 久木      関西学院大学経済学部准教授

(敬称略・五十音順)